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会長挨拶

第28回日本末梢神経学会学術集会 会長 平田 仁(名古屋大学医学部手外科教授)

第28回日本末梢神経学会学術集会
会長 平田 仁(名古屋大学医学部手外科教授)

第28回日本末梢神経学会学術集会開催にあたって

環境情報の収集や身体制御は生物が厳しい自然環境を生き抜くための必要条件であり、多細胞化を通して身体が大型化し、組織化されていく過程で情報を正確かつ迅速に伝達する仕組みの獲得は必要不可欠なものでした。末梢神経の起源は極めて古く、また、身体を構成する凡そ全ての組織は末梢神経ネットワークの中に組み込まれています。このため医学の全領域で末梢神経障害に起因する疾患が存在すると断じても過言ではありません。然るに、医学の進歩に伴い研究分野の細分化が進行し、末梢神経全体を俯瞰して病態や治療技術を探索することが徐々に困難となっていました。このような背景を考えると末梢神経障害の研究を個別分野で精力的に推進する研究者が一堂に介し学際的にネットワークとしての末梢神経障害を協議する場を模索することは必然の成り行きでした。そうは言っても特徴や習性の異なる分野間の連携は容易に実現できるものではありません。我々にとって幸いだったのは祖父江逸郎先生、矢部裕先生をはじめ寛仁大度にして高い先見性を備えた先達に恵まれたことであり、先生がたの労を惜しまぬ努力の結果として平成2年に末梢神経研究会が学際性を前面に打ち出して組織されたことです。第1回末梢神経学会は祖父江逸郎先生が会長を務め名古屋市において開催され、その後着実に発展をして平成12年には日本末梢神経学会へと改組して更に規模を拡大しつつ今日に至っています。私ども手外科学分野はとりわけ末梢神経障害に注力してきた分野であり、本会の黎明期から積極的に関わり、また他領域の専門家から多くを学び吸収してきました。本邦初の独立した手外科学講座としてスタートした私どもとしては今回第28回学術集会を主催させていただくことは望外の歓びであり、多様な分野の研究者にご満足いただける真に学際的な学術集会としたいと考え総力をあげて準備を進めているところです。第28回学術集会の標語は「ネットワークを俯瞰する」といたしました。上述の背景に加え、昨今の脳科学研究の急速な進歩の中で中枢、末梢という従来の区分をも超えて思考を巡らし、真理を探究することが求められる時代に入ったとの思いから掲げたものです。末梢神経と、それに支配される組織の異常が中枢の機能的・構造的異常を引き起こし、それにより病像が更に修飾されるという複雑な異常波及のループが多様な疾患で注目され始めています。今回の学術集会ではネットワークを俯瞰した議論が従来以上に活発に交わされることを期待しています。