手根管症候群

定義

アメリカ整形外科学会(AAOS)はガイドライン作成のために手根管症候群(CTS)を以下のように定義した。

CTSは手関節レベルで正中神経が障害される症候性の圧迫性神経障害である。手根管内での圧上昇とその部位での神経機能の障害を特徴とする。これは多くの異なった疾患や状態、事象を原因として起こり、患者は手のしびれやちくちくする痛み、腕の痛み、筋力低下といった症状を持つ。この疾患は年齢、性、民族、職業にかかわらず発生し、系統疾患や局所機械的な要因、病的要因に関連することも、これを直接原因とすることもある(1,2)。

 ガイドライン上のGradeについて最初に紹介しておく。

Grading the Recommendations

Each guideline recommendation was graded using the following system:

A: Good evidence (Level I Studies with consistent finding) for or against recommending intervention.

B: Fair evidence (Level II or III Studies with consistent findings) for or against recommending intervention.

C: Poor-quality evidence (Level IV or V) for or against recommending intervention.

I: There is insufficient or conflicting evidence not allowing a recommendation for or against intervention.

 

疫学

 発生率と有病率:米国で年間1000人に対して1-3人のCTSが発生し、有病率は一般人口1000人中約50人である(1)。

 1981-1985年にミネソタ州・オルムステッド群の住人でCTSの罹患率・症例数調査する疫学研究が行われた。全体としてこの期間に10069人がCTSと診断された。罹患率(2000年のアメリカの人口に調整)は10万人当たり376人で、女性は491人/10万人、男性は258人/10万人の罹患率であった(p<0.0001:有意に女性の方が多い)。年間調整率では1981-1985年の間は258人/10万人であったが2000-2005年には424人/10万人と増加していた(p<0.0001:近年の発生が有意に多い)。これは1980年代から90年において疾患の認識が高まっていることと共にNCSなどの診断技術も向上したことも影響していると思われる。実際New York Timesの記事においてCTSに関するものが年次的に増加している。今までにもイギリス、オランダ、イタリアで1990年代の報告があるがいずれも女性が男性よりも発生頻度が高い。ただ近年においてはその比率は差が低くなってきている傾向にある。年齢層別では若年層の増加は1980初期から中期に一番見られており、高齢者の増加は1990年以降に最も見られていた。2000-2005年においてCTSの罹患率は若年層において減少し高年層において増加している。手根管開放術が行われた患者は年平均109人/10万人であった。手根管開放術は当初は増加が見られていなかったが2001年より50歳代以上の患者に増加がみられる。これはCTS高年層患者において重症度が高まっているとも言えるし手術に対する希望する人が増えてきているともいえる。

また仕事関連のCTSは11人/10万人であった。仕事関連のCTSは1980年代に急激に増えたが1991年より男性の減少、1996年より女性の減少がみられる。1970年代より産業の発展やパソコン等の使用により職業関連CTSが増加したと考えられる(3)。

別の統計で1998年労働者10000人中3人がCTSのために休職した。それらの患者の約半数は10日以上休むことになった。医療費と休職による損失を合わせると平均で約30000ドルが労働者のCTS患者にかかったと推測される。2005年の統計ではCTSのために休職した労働者の半分近くが31日以上であった。この年、米国労働統計局によるとCTS患者16440人が休職を要した(1)。

危険因子としては妊娠、加齢、女性、特殊作業、手の繰り返し運動、強い家族歴が危険因子として挙げられる。甲状腺機能低下症、糖尿病、自己免疫疾患、リウマチ、関節炎、肥満、腎疾患、外傷、手関節や手の形や大きさといった解剖学的素因、感染症、薬物乱用といったことも影響する(1)。

 

病態

CTSは手根管内での正中神経障害であると長く考えられていた。しかしながら、最近の臨床研究で、障害を受けた手の機能が正中神経機能と密接に相関することに対して、CTSの自覚症状は神経線維の病理と関連が無いと報告されている(4,5)。実際、特徴的な症状を示すCTS患者の10%以上が電気生理学的に正常な所見を示し(6)、特発性CTSの病態生理は手根管サイズ減少と内容量増加の結果であると考えられている。CTSのある患者とない患者との間で横手根靭帯の形態学的、生体力学的な状態に有意な違いは認めなかった(7,8)。それゆえ、CTSは手根管内の容量増加が原因であると考えられている。この仮説は最近のMRIを用いた研究で、屈筋腱滑膜の腫脹と腱間距離の増大、横手根靭帯の掌側張り出しをCTSの病期にかかわらず認めたことによって支持されている(9-11)。手根管開放術の際に得られた生検標本では、炎症細胞浸潤は極めて稀で、浮腫と非特異的線維化がよくみられる。Scelsiら(12)は組織学的変化と臨床経過との関係を明らかにした。また、早期のCTSは肥厚した浮腫状の滑膜鞘を持ち、一方、進行期のCTSはtype ? collagenの沈着した広範囲の線維化を示した。細胞外マトリックス(ECM)再構築に加えて、Nealら(13)は腱滑膜と血管壁の肥厚と内膜の増殖を指摘し、これらの変化がCTSでよく認められることを報告している。

 CTSの症状は病気の進行と伴に変化する。初期に、患者は間歇的な痛み、しびれとヒリヒリ感を訴える。しかし、正中神経機能は比較的良く保たれている。中期には症状が継続的になり、正中神経障害も出現し始める。後期にはひどい運動、知覚障害が生じるが、しばしば前期よりも疼痛は減弱している(14)。機能状態は正中神経障害とよく相関するが、症状のひどさ、特に痛みは正中神経機能がよく残っているときに悪くなるということが明らかにされている(5)。このようにして、CTSの症状は後期の変化よりも初期の屈筋腱滑膜の変化により関連を示していると考えられる。

 近年、CTSの病因に関与すると考えられる分子の生化学的分析によって、様々な報告がされている。CTS患者腱滑膜の大部分でcyclooxygenaze-2(COX-2)が確認された(15)。Interleukin-6(IL-6)、prostaglandin E?(PGE?)、malondialdehyde (MDA)は有意に増加していた(16)。血管内皮細胞成長因子(VEGF)とPGE?はCTSの中期に発現していた(17)。matrix metalloproteinase-2(MMP-2)は初期の疼痛が強い時期に強く発現していた(18)。tenascin-Cも初期の腱滑膜容量が多いときに強く発現し、これとPG-M/versicanの発現は関連を認めた(19)。

 Hirataらは術前の症状持続期間によって4グループに分けた。グループA(3か月以内)、グループB(4?6ヶ月)、グループC(7?12ヶ月)、グループD(12ヶ月以上)。これらの時期別に組織所見の特徴を以下に述べる。

グループA(4ヵ月未満)の時期に血管壁全体にtenascin-Cが発現し、滑膜表層と結合組織にはPG-M/versicanが発現している。滑膜表層には活性型MMP-2も発現している。この時期VEGF、PGE?はまだ発現していない。腱滑膜容量は最も多く、組織では強度の浮腫、細胞質間隙と腱滑膜の絨毛性肥厚を認め、血管は正常な形態を示す。

グループB(4-6ヵ月)はtenascin-Cの発現が外膜と内膜のみ、MMP-2はneointimaのみとなり活性も少し下がってくる。PGE?が産生され、VEGFが血管平滑筋細胞、内皮細胞で強く発現する。腱滑膜容量はまだ多く、組織では滑膜表層細胞の増殖、浮腫から線維化が始まる。血管壁の肥厚が起こり、内腔の狭小化、内皮細胞と平滑筋細胞、周皮細胞の増殖を認める。

グループC(7-12ヵ月)では、tenascin-C発現は肥大した内膜のみ、PG-M/vesicanも狭窄した血管内膜のみとなり、MMP-2の活性は弱まる。この時期疼痛が減少する結果にも矛盾しない。VEGF、PGE?の発現は弱まり、組織では線維化と線維芽細胞密度の減少、動脈狭小化と中膜・内膜の肥厚、時に血栓形成を認める。

グループD(12ヶ月以上)はその特徴的な病歴として、ほとんどの患者が長く軽い症状の持続の後、急な症状の悪化のために手術を決心した。このためにBとCの時期が混在している。tenascin-Cは小動脈に強く発現し、VEGFの発現もグループBと似ている。グループCよりも疼痛レベルが高く、MMP-2発現もやや高くなっている(17-19)。

 

診断

 CTSの診断は病歴、理学所見、検査によって総合的に行うことが必要である。一般的な病歴、理学所見に加えて、正中神経領域の知覚検査(2点識別覚、Semmes-Weinsteinテスト)を行う。初期であれば、手指正中神経領域のしびれ、夜間痛が特徴的で、病気の進行とともに疼痛の軽減、母指球筋委縮による巧緻運動障害が出現する。

誘発テストとしてPhalenテスト、Tinel徴候、正中神経圧迫テスト、reverse Phalenテストがある。Phalen テストの感度は0.46?0.80、特異度は0.51~0.91、Tinel 徴候の感度は0.28~0.73、特異度は0.44~0.95、正中神経圧迫テストはそれぞれ0.04~0.79、0.25~0.96。2つ以上の誘発テストを行うと感度も特異度も上がる。例えば、Phalenテストと正中神経圧迫テストを合わすと感度0.92、特異度0.92となる(1)。 

神経伝導速度検査はAAOSガイドラインの中でGrade Cであるが、上記のような誘発テストが陽性でかつ手術を考慮する場合はGrade Bと推奨されている(1)。CTSでは遠位潜時の遅れ、複合筋活動電位の振幅低下、消失、知覚神経伝導速度遅延、活動電位振幅の低下、消失等が認められる。正中神経と尺骨、橈骨神経との比較をすることと、測定時の室温や皮膚温を一定にすることが重要で、施設、測定器によって正常値を決めておくことが望ましい。

 補助診断としてMRI や超音波等の新しい機器を習慣的に用いることは薦められていないが、状況によっては有用で、特に占拠性病変の診断には効果的である。特発性のCTSではMRIのT2強調で正常よりも正中神経が高輝度となり、有鈎骨鈎レベルでの横手根靱帯掌側張り出しが特徴的な所見である。手根管開放術後に再発した手根管症候群に対するMRI評価の研究で、再発群では神経周囲にFibrosisがあり、造影MRで正中神経がenhanceされ、横径は拡大し、扁平化する事が多いという結果が得られた。著者らは手根管症候群術後も痛みが続く患者には正確な再発評価の為、筋電図だけでなくMRIも行うことを薦めている(20)。CTSの超音波診断について、Andreaらは正中神経断面積を測定し、手根管近位部と手根管内との差を算出することによって診断率が向上することを報告している(21)。

 

治療

 CTS診断後の保存療法の代表としては装具療法と、手根管内ステロイド注入療法があり、比較研究もおこなわれている。ガイドラインではこれらの保存療法を行うことに対してGrade C、保存的治療を行っても2?7週で効果が無かった場合は他の保存的治療か手術治療に変更することが薦められている(Grade B)。内服の鎮痛剤、抗うつ剤、鎮痙剤などは活動(仕事)変更、鍼治療、認知行動療法、利尿薬、運動、電気刺激、フィットネス、イオン導入、レーザー、ストレッチング、マッサージ療法、磁気治療、栄養補給剤、喫煙中止、全身的なステロイド注射、タッチ療法、ビタミンB?、減量、ヨガなどと同様にGrade Iに分類されている。手術に関しては特定の手術方法にかかわらず、外科的に屈筋支帯の完全な切離が推奨されている(Grade A)(2)。

 

保存的治療

 装具療法:CTS患者に対するスプリント治療は短期的には有効な事があり、症状の軽減が得られることが知られている。しかし、Cochrane reviewでも述べられているように手術療法の方が有意に症状を改善させる(22)。一方、CTS症状のある労働者に対する夜間スプリントの無作為比較試験では、自己評価にてCTS様の自覚症状のあった労働者では6週の夜間スプリントによって効果がみられ、1年後にも効果は残っていた。スプリント群では正中神経の障害の程度によらず手の使い勝手は改善した。コントロール群では正中神経機能が正常な者でのみ改善がみられた。結果から、短期間の夜間装具でもCTS症状を有する労働者の手関節・手・指の使い勝手は改善することが示された(23)。

 ステロイド注射:Cochraneでは局所ステロイド注射が手根管症候群に対して効果があるか12の論文(うち無作為対照研究2つ)をreviewされた。この結果は一回の局所注射で一ヶ月までは有意に症状を軽減させるが、それ以降効果が持続するかについては不明であった。注射回数(一度vs二度)、ステロイド容量(低濃度vs高濃度・long-acting vs short-acting)についての検討ではそれぞれ差はなかった。鎮痛剤と夜間装具の併用群とも差は見られなかった。ステロイドの全身投与(経口・注射)よりは注射の方が効果は認められた。今後は効果の見極めと、症状の重症度によっての効果の違いを調べていく必要があるとまとめられている(24)。また、ステロイド注入部位に関して15体のcadaverを用いた研究で、長掌筋(PL)腱橈側(方法A)、尺側(方法B)を比較した報告がある。方法Aでは神経を直接刺したのが4例、正中神経からの平均距離は1.34mm±1.83mm。一方、方法Bでは神経を直接刺したのが1例、正中神経からの平均距離は4.79mm±3.96mmであった。この検討で、一般的な方法であるPL腱橈側の方が神経の近くに注射できるが、神経内に注射してしまうリスクがあることが明らかになった(25)。

 

手術治療

 CTSに対する手術治療で横手根靱帯を切離して正中神経の除圧を行うことについて異論はないと思われるが、様々な方法が行われている。従来法である手根管開放術(OCTR)、小皮切で行う鏡視下手根管開放術(ECTR:endoscopic carpal tunnel release)や鏡視を行わない小皮切の開放術がある。横手根靱帯の切離後、靱帯延長や神経内神経剥離、滑膜切除を行うことは推奨されていない(Grade I)(2)。

OCTR:従来から行われている手掌部から前腕遠位まで皮切を加えての横手根靱帯切離である。皮切が大きく、遠位手掌皮線をまたぐ事に対する抵抗感がある。しかし、占拠性病変合併や、鏡視下手術不能例(手関節背屈不能、カニューレ挿入不能など)、再発例など他の方法が選択できない場合には必要となる術式である。これに対して皮切を小さくして行う術式が発達してきている。

 ECTR:1989年、One-portalで行うOkutsu法、Two-portalのChow法の2法が報告された(26,27)。小皮切で低侵襲により社会復帰が早いという意見があるが、OCTRとの間で特に有意差は無いという報告もある(28)。破格正中神経反回枝損傷や、正中神経本幹損傷の危険性に十分注意する必要がある。

BerisらはCTSに対してOCTRを施行した110例において術中に偶然発見した正中神経の破格をAmadioの分類に基づいて検討し、11患者でその存在を報告した。2例は正中神経が二分し、その間をmedian arteryが走行していた。2例は運動枝が手根管内で正中神経の尺側より出ていた。1例で、手掌皮枝が正中神経の橈側から分かれ、横手根靱帯の近位端から数mm遠位で靭帯本体の中央を短く穿通していた。3例で、正中神経の尺側から出で、横手根靱帯の尺側縁を穿通する異常な知覚枝があった。3例で、正中神経の運動枝が横手根靱帯の下で分枝し、近位へ曲がって靭帯を越えて、母指球へ向かっていた(29)。

 

・Amadio分類(1988)

Group1は近位での分裂の異常で3%の発生率。

Group2は運動枝の異常(19%)で、部位や枝の数によってさらに細分される。

Group3は掌側皮枝のバリエーションで2.5%の発生率。

Group4はmedian-ulnar知覚枝の異常(1%)。

Group5は分類不能

 

・Lanz分類(1977)

Group0:extraligmentous thenar branch (standard anatomy)

Group1:variations of the thenar branch

Group2:presence of accessory branches in the distal part of the carpal tunnel

Group3:proximal division of the median nerve

Group4:presence of accessory branches proximal to the carpal tunnel

 

Group1のsubgroup

1A:運動枝が横手根靱帯の下に始まって、遠位端あたりで曲がる(subligamentous)

  発生率は31%(Lanz)、27.3%(Beris)であった。

1B:運動枝が正中神経橈側から始まり、横手根靱帯を通る(transligamentous)

  発生率は23%?80%(Johnson and Shrewsbury、Lanz、Mumford)

1C:運動枝が正中神経の尺側から始まる(ulnawards)

  発生率は18.2%(Beris)であった。

1D:運動枝が横手根靱帯の遠位端あたりで曲がって、靭帯の掌側表面に乗る(supraligamentous)

 

評価

 近年、術前術後の機能評価法として患者の主観的評価が重要視されており、患者立脚型質問票が用いられている。ガイドラインでも以下の質問票を1つもしくは複数用いることを薦めている(Grade B)(2)。

?   BCTQ?Boston Carpal Tunnel Questionnaire (disease-specific)

?   DASH ? Disabilities of the arm, shoulder, and hand (region-specific; upper limb)

?   MHQ ? Michigan Hand Outcomes Questionnaire (region-specific; hand/wrist)

?   PEM (region-specific; hand)

?   SF-12 or SF-36 Short Form Health Survey (generic; physical health component for global health impact)

 SF-12やSF-36は身体全般、DASHは上肢機能を、MHQは手関節以遠、PEMは手の機能を調査する目的で作成されたもので、BCTQのみ疾患特異性のある評価法である。これらの評価法は日本語版が作成されているものもあるが、全て原文は英語で作成されているため、文化的な違いから日本語訳が難しい場合や、日本人に対しては合わない項目も含まれる。

 上肢機能評価として国内では一般的にDASH日本語版が使用されている事が多いが、我々は独自の上肢機能評価票Hand20を作成し、その内的整合性、再テスト再現性を調査しDASHと同等の結果を得られることを報告してきた(30)。CTS治療の前後におけるDASHおよびHand20の反応性につき比較検討を行った。2008年1月よりCTSに対し手術的治療、手根管内ステロイド注射、装具療法を行った患者で、治療の前後にDASH、Hand20を用い評価した患者を対象とし、標準化反応平均(SRM)、エフェクトサイズ(ES)を用い検討した。手術的治療31例、手根管内注射12例、装具療法7例であった。結果、50例中、DASHで10例が評価不適例であった。手術前後におけるDASHは平均40.5点から30.7点、Hand20は49.5点から36.9点に改善し、手根管内注射ではDASHは39.8点から30.7点、Hand20は36.3点から31.8点、装具処方ではDASHは18.7点から14.1点、Hand20は20.6点から8.0点へと改善した。手術を行った患者の治療前後の反応性は、DASH/Hand20でSRM 0.48/0.48 :ES 0.52/0.54 であり、手術と保存的治療を合わせた患者の治療ではSRM 0.48/0.49:ES 0.35/0.37であった。

電気生理学的重症度別では、Padua分類を用いた(31)。Mild;Moderate群とSevere;Extreme群にわけ評価した。Mild;Moderate群でDASHは38.5点から24.4点にHand20は46.2点から27.0点に、Severe;Extreme群ではDASHは39.8点から34.0点にHand20は51.8点から41.3点へと軽快した。反応性はMild;Moderate群でDASH/Hand20はSRM 0.48/0.63 :ES 0.59/0.66、Severe;Extreme群でDASH/Hand20はSRM 0.46/0.46 :ES 0.47/0.58であった。DASHは、欠損項目を生じやすく評価不適例となりやすい。今回の結果でもHand20は評価不適例が存在しなかったのに対し、DASHは10例(20%)が評価不適となった。Hand20はCTSの治療前後においての反応性にてDASHと同等の成績が得られたが、重症度別評価においては、Mild;Moderate群でHand20のほうが、反応性が高い傾向であった。DASHの健常者の基準値はHand20より高いことが知られており(32,33)、軽症例に対しては、Hand20のほうが評価に適していた。

 

まとめ

 CTS研究についての報告は数多いが、まだエビデンスレベルの高いものは少ない。AAOSガイドライン上でもGrade A(Level ? study)で推奨されているものは、治療の項目の中で手術的に屈筋支帯の完全な切離を行うことのみである。診断、治療の妥当性、必要性を検討するためにも、適正な評価法を用いたさらなる詳細な研究が必要である。

 

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